日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ

日本型モノづくりの敗北 零戦半導体・テレビ

2013/10/18
湯之上 隆 (著)

 

日本の高度成長から現代の停滞期に至った背景や原因、今後の日本の進むべき方向について記された本。

半導体技術者だった著者が、日本半導体業界を中心として、日本の製造業の盛衰について語っている。その内容はかなり踏み込んだ内容(企業名名指し)となっていて面白い。

 

ジャパンアズナンバーワンとはなんだったのか。この本を読むと日本製造業の強みについても感じることができる。実際に半導体産業は世界を席巻し、日本がリードして引っ張っていた時代があった。日本は部分最適に集中して、与えられた枠組みの中で持続的に開発し続ける事で、成長してきたようである。

しかしいかに強い技術があっても、ひとたびパラダイムシフトが起きれば、イノベーションのジレンマに陥り、その技術は無力になモノになってしまう。欧米(特にアメリカ)はこのような、断続的な開発に適応することが得意なのだと思う。

人口増加も頭打ちとなり、供給が需要を上回ってしまうような現代において重要なのは、いかにして新市場を創造し、爆発的に普及するイノベーションを起こすか、という事だ。そんなことは理想論だ!と思ってしまうが、本書の提案では「創造的模倣能力を活かして、問題の発明を行うことが大事」との事。

そもそも顧客は解決してほしい目の前の課題は気づいているが、大事なのは提供側が問題を「発明」することである。いいものを作って売るという発想から脱却して、売れるものを作るという意識が必要となる。韓国のサムスン電子は、マーケッターに力を入れており、海外常駐は当たり前、優秀なトッププレーヤーが市場調査部門に配置されているとの事。日本企業も見習うところがあるのではと感じた。

 

日本ではよく「技術力が高い」と言われる。私の会社でもそのような風潮はあるが、低コストでつくる技術力、短時間でつくる技術力 については非常に低い。開発部門は高機能を達成するためだけの研究ではなく、市場調査や他業種研究を行い、売れるものを作る開発も進めてほしいものです。