生産性

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

2016/11/26
伊賀 泰代 (著)

 

「生産性」とは、インプットに対するアウトプットの量の事。言葉ではわかっていてもあまり真剣に考えた事がなかったこの言葉。本書を読んで考えが変わった。

 

本の冒頭で採用活動における生産性についての例が挙げられている。採用活動における「正解」「正しい姿」とは何か。闇雲に志望者を集め、説明会に膨大な学生が集まるようでは生産性は高いとは言えない。生産性の観点から真に理想的な採用活動とは、自社にマッチした優秀な学生が採用予定人員の数だけ、応募してくる状態である、とのこと。

自分は、如何にインプットを減らした状態で質の高いアウトプットを増やすか、という視点が不足していた。量を追う発想が生産性を下げているということを認識させられた。

例えば残業によって仕事量をこなしている場合。残業代は企業にとっては割増賃金となっている以上、残業をすればするほど生産性は下がる(アウトプット以上にインプットの量が増えている)。人員増加も同じで、教育コストが増えるため生産性を犠牲にしているのだ。

 

また生産性を計算する分子となる「付加価値」とは、顧客が評価する価値である、という点にも考えさせられた。欧州企業では製品の機能を削除したり絞ったりすることで付加価値を高め、製品価格を上げることもあるそうだ。投入した価値の合計が付加価値を決めるという発想では、高機能=高付加価値という誤った考えになり競争力を失ってしまう。シンプルで多様性のある製品を生み出すためには、付加価値についても深く考えなければならない。

 

そのほか、覚えておきたい点を下に列挙

イノベーションを生み出すためにも生産性向上は不可欠。目の前の仕事の山に忙殺され、自己研鑽や越境学習もできない状態では創造性が失われていく。チームとして生産性を常に向上させ、イノベーションへの投資をしていかなければ生き残れない。

 

・今はあまりいないと思うが、徹夜で仕上げました!という仕事を高く評価する会社は成長できない。残業は周りに伝染していく。優秀な人=早く仕事を終わらせて帰る人 という文化を醸成していきたい。

 

・成長することとは、生産性が上がること。労働力を多く投入することで成果を上げ続けるのは成長ではないし、持続可能な方法ではない。部下の育成はチームの生産性を上げることが目的。部下の育成と目の前の業務を分けて考えるマネージャーが多いが、もっと短期的な視点を持つことも大事。具体的な数値目標を与えて、チームとしての生産性を上げるための育成を心がけることが重要。

 

・人口減少はチャンスととらえて、残業が多いから残業を減らす といったコインの裏返しを辞め、「生産性の向上」という解くべき本題に向き合っていくことが大事。

 

・日本企業は内部労働市場型で簡単に解雇できない文化となっている。それならそれで企業内の人材をもっと有効活用すべき。特に戦力外中高年の育成が大事。高度成長期には子会社への出向や肩書を増やすことで対応していたが低成長時代には育成して貢献してもらう必要がある。本人に「何が足りていないか」を具体的に伝え、成長目標を持ってもらうことでお互いにとってメリットのある評価制度を作っていく必要がある。